「ハラスメントかも?」と感じたら最初に考えるべきこと 4

ハラスメント

ケーススタディで考える「これってハラスメント?」

デジタル時代の新しいケース

次に、リモートワークの普及など、働き方の変化に伴って増えてきた新しいタイプのケースを見ていきましょう。

ケース8:オンライン会議で容姿について言及された

オンライン会議の冒頭、上司がアイスブレイクのつもりで、あなたにこう言いました。「〇〇さん、今日はずいぶんラフな格好だね。部屋着?」「ちょっと疲れた顔してるけど、昨日、夜更かししたの?」。上司に悪気はないようで、他の参加者も苦笑いしています。しかし、あなたは自分の容姿やプライベートな状態に言及されたことに不快感を覚えました。

【心のざわつきポイント】

対面であれば、服装や表情はより多くの情報の一部として自然に受け止められます。

しかし、オンライン会議では、カメラに映る四角い画面の中の「あなた」がすべての情報になります。

そのため、容姿への言及は対面以上に、あなたのプライベートな領域に踏み込み、評価されているという感覚を相手に与えがちです。

特に、背景に映る部屋の様子や家族の気配などに触れることは、相手のプライベート空間を侵害する行為であり、「個の侵害」にあたる可能性があります。

業務とは無関係な、個人の容姿や私生活への言及は、たとえ悪意がなくても相手を不快にさせるリスクが非常に高いのです⁷。

【考えてみましょう】

– あなたは、オンライン会議で自分のどこまでを「見せる」ことを許容できますか?

– もし、あなたが同じことを言われたら、笑顔で受け流せますか?

– あなたの会社には、リモートワーク時の服装などに関する明確なルールがありますか?

ケース9:業務用チャットで頻繁にプライベートな質問をされる

あなたは上司と、業務用のチャットで日常的にやり取りをしています。しかし、その上司は業務連絡のついでに「週末は何してたの?」「彼氏とは、うまくいってる?」といったプライベートな質問を頻繁に送ってきます。チャットは一対一のクローズドな空間であり、あなたは返信しないと失礼にあたるのではないかと、対応に苦慮しています。

【心のざわつきポイント】

業務用ツールを使った一対一のコミュニケーションは、相手からのメッセージが半ば「業務命令」のような強制力を帯びてしまう危険性があります。

また、チャットはメールよりも気軽に、24時間いつでも送れてしまうため、公私の境界がより曖昧になりがちです。

業務と無関係なプライベートな質問を執拗に繰り返す行為は、セクシュアルハラスメントや、パワーハラスメント(個の侵害)に該当する可能性があります。

特に、チャットの履歴は日時と共に明確な「証拠」として残るため、その執拗さを客観的に証明しやすいという特徴もあります。

【考えてみましょう】

– あなたはその質問に、正直に答えていますか?それとも当たり障りのない嘘でごまかしていますか?

– 業務時間外にも、そうしたチャットが送られてくることはありますか?

– もし、あなたが質問を無視したら、上司の態度は変わると思いますか?

ケース10:職場のSNSグループで自分の悪口を発見した

あなたの同僚たちがプライベートなSNSのグループで、あなたの悪口や仕事のミスを嘲笑するような投稿を繰り返していることを、偶然知ってしまいました。そのグループには、あなたの直属の上司も参加しており、投稿に「いいね!」を押していることも分かりました。あなたは裏切られたというショックと、誰も信じられないという絶望感でいっぱいになりました。

【心のざわつきポイント】

これは陰湿で、非常に悪質ないじめ、そしてハラスメントです。

たとえそれが会社の管理下にない、プライベートなSNS上でのやり取りであったとしても、職場の人間関係に基づいて行われ、その結果あなたの就業環境が著しく害されているのであれば、職場マターとして会社が対応すべき問題となります。

特に、上司がそれに加担している、あるいは見て見ぬふりをしている場合、会社はその使用者としての責任をより重く問われることになります⁹。

これは明確な「精神的な攻撃」であり、「人間関係からの切り離し」です。

あなたは決して一人で抱え込む必要はありません。

【考えてみましょう】

– あなたはその事実を、どうやって知りましたか?その証拠は確保できていますか?

– そのグループには、何人くらいの人が参加していますか?

– 会社には、信頼してこの事実を打ち明けられる人はいますか?

ケース11:在宅勤務中の過度な監視・連絡

あなたは在宅で勤務しています。会社からは常にパソコンのカメラをONにしておくよう指示されており、上司はあなたが席を立つたびに「どこに行くんだ?」とチャットで尋ねてきます。また、1時間ごとに、その時点での業務の進捗を詳細に報告することも義務付けられています。あなたは常に監視されているようで、息が詰まり、全く仕事に集中できません。

【心のざわつきポイント】

在宅勤務では、部下の働きぶりが見えにくいため、上司がその状況を把握したいと考えること自体は理解できます。

会社には労働者の労働時間を管理するという義務もあります。

しかし、その管理の「手段」が社会通念上、許される範囲を超えて、労働者に過剰な精神的負担を強いるものであれば、それはパワーハラスメント(個の侵害、精神的な攻撃)に該当する可能性があります。

常にカメラで監視する行為は、あなたのプライバシーを著しく侵害するものです。

また、過度に頻繁な報告の要求は、あなたの自主性を奪い、業務の効率をかえって低下させることにもつながります。

**【考えてみましょう】**

– 会社はなぜ、そこまで詳細な管理が必要だと考えているのだと思いますか?

– その監視や報告義務は、あなただけが対象ですか?それともチーム全員ですか?

– あなたはそのルールについて、会社や上司に疑問や改善案を伝えたことはありますか?