「ハラスメントかも?」と感じたら最初に考えるべきこと 3

ハラスメント

ケーススタディで考える「これってハラスメント?」

対面・従来型のケース

ケース5:「見て覚えろ」と言われ、仕事を教えてもらえない

新しい部署に配属されたあなた。しかし、教育係の先輩社員は「俺の背中を見て覚えろ」「一度しか言わないからな」と言うばかりで、具体的な業務内容や手順を体系的に教えてくれません。質問をしても「それくらい自分で考えろ」と不機嫌な顔をされます。結果、あなたはミスを繰り返し、その度に叱責され、孤立感を深めています。

【心のざわつきポイント】

一見すると、暴力や暴言といった分かりやすい攻撃がないため、ハラスメントだと認識されにくいかもしれません。

しかし、これはパワーハラスメントの6類型の一つである「過小な要求」、あるいは育成を放棄するという「精神的な攻撃」に該当する可能性があります。

仕事を教えない行為は、あなたの成長の機会を奪い、職場で能力を発揮することを意図的に妨害する行為です。

これは、労働契約において会社が労働者に対して負っている安全配慮義務に違反している可能性もあります。

「昔ながらの職人気質」と言えば聞こえはいいですが、現代の組織においてこのような育成放棄は、断じて許されるものではありません。

【考えてみましょう】

– あなたは、業務を遂行するために最低限必要な情報を与えられていますか?

– 質問できない雰囲気は、意図的に作られていると感じますか?

– この状況について、さらに上の上司や人事部に相談することはできそうですか?

ケース6:みんなの前で「話を聞くときはメモを取れ」と叱責された

会議中、あなたがメモを取らずに話を聞いていたところ、上司が他の出席者もいる前で「〇〇さん、人の話を本気で聞く気があるなら、ちゃんとメモを取りなさい。社会人の基本だろう」と強い口調で叱責しました。あなたは顔が熱くなるのを感じ、恥ずかしさと屈辱で、その後の会議の内容が全く頭に入ってきませんでした。

【心のざわつきポイント】

「メモを取る」ということ自体は、ビジネスの基本であり、上司の言っていることは一見すると「正論」です。

しかし、問題はその「伝え方(手段)」と「場所」です。

もし、上司が会議の後にあなたを個別に呼び、「今後のために言うけれど、大切な話の時は、メモを取る習慣をつけた方がいいよ」とそっとアドバイスしてくれたとしたら、あなたの受け止め方は全く違ったはずです。

それを、あえて大勢の人がいる前で見せしめのように叱責する行為は、あなたの成長を促すという「指導」の目的から逸脱し、あなたに恥をかかせるという「精神的な攻撃」の意図があったと見なされても仕方ありません。

【考えてみましょう】

– 上司はなぜ、みんなの前であなたを叱責したのだと思いますか?

– あなたはその叱責によって、「次から気をつけよう」と前向きに思えましたか?

– その上司は、他の人に対しても同じような叱責の仕方をしますか?

ケース7:自分だけが職場の飲み会に誘われなかった

あなたの部署では月に一度、有志で飲み会が開かれています。しかし、あなたはその飲み会に一度も誘われたことがありません。後日、同僚たちが飲み会での楽しかった出来事を話している輪に入れず、あなたは自分が意図的に仲間外れにされているのではないかと感じています。

【心のざわつきポイント】

勤務時間外の、しかも「有志」の集まりであるため、これは業務とは関係ないと考えることもできます。

誰を誘うかは、幹事の自由かもしれません。

しかし、もしその飲み会が部署内のほぼ全員が参加しており、そこで業務に関する重要な情報交換がなされていたり、参加不参加がその後の人間関係や仕事の進めやすさに影響を与えていたりするならば、話は別です。

あなた一人を意図的に誘わない行為が継続的に行われることで、あなたが職場で孤立し、精神的な苦痛を感じているのであれば、それはパワーハラスメントの類型の一つである「人間関係からの切り離し」に該当する可能性があります⁶。

【考えてみましょう】

– 飲み会に誘われないこと以外にも、職場で孤立していると感じる出来事はありますか?

– 飲み会に参加しているメンバーは、特定のグループですか?それともあなた以外の全員ですか?

– もし、あなたが「私も、今度誘ってください」と言ったら、どうなると思いますか?