企業内ハラスメント相談窓口に相談が寄せられない理由を、学校のいじめ報告件数の減少データと関連づけて解説
企業がハラスメント相談窓口を設けても相談が少ない理由は、学校における「いじめ報告件数の減少傾向」と共通する心理的・社会的要因が影響していると考えられます。文部科学省のデータでは、小学校ではいじめ報告件数が多いものの、中学校、高校と進むにつれて報告件数が減少する傾向があります。これは、「相談することへの心理的ハードルが上がる」 という点で、企業のハラスメント問題と同じ構造を持っています。
1. 「相談する心理的ハードル」が成長とともに高くなる
(1)小学校:比較的相談しやすい環境
- 教師や親との距離が近く、日常的に相談する機会が多い
- 「いじめは悪いこと」という価値観が強調されているため、相談しやすい
- 被害者側が「自分が悪い」と考えるケースが少ない
→ 企業における「新人・若手社員」の状況に類似
新入社員は比較的、上司や人事部と近い関係にあり、指導の一環として相談できるケースもある。
(2)中学校:相談件数の減少
- 「いじめを報告すると報復を受ける」リスクを意識し始める
- 周囲の評価(カースト意識)が強まり、弱みを見せたくない
- 「我慢することが成長」と捉えやすくなる
→ 企業における「中堅社員」の状況に類似
ハラスメントを相談することで「職場での立場が悪くなる」「上司に目をつけられる」と考え、相談をためらうようになる。
(3)高校:相談件数がさらに減少
- 「自分で解決しなければならない」という意識が強まる
- 相談しても問題が解決しないと思い込み、諦める傾向
- 教師(管理側)も「表に出ないなら問題なし」と受け止めがち
→ 企業における「ベテラン社員・管理職」の状況に類似
ベテランになると、「この程度はどこでもある」「ハラスメントを訴えるのは未熟だ」と考え、相談すること自体を選択肢から外す ようになる。
2. 企業と学校に共通する「相談を阻害する要因」
(1)報復・レッテルを恐れる
- 学校:「チクったら余計にいじめられる」
- 企業:「相談したら評価が下がる・左遷される」
(2)問題が本当に解決するか疑問視する
- 学校:「先生に相談しても解決しない」「もっと陰湿になるだけ」
- 企業:「人事部に相談しても上司が守られる」「結局、泣き寝入りになる」
(3)相談窓口の信頼性の欠如
- 学校:「教師が見て見ぬふりをする」「教師がいじめの加害者側になることもある」
- 企業:「相談しても加害者が処分されない」「人事部が上司とつながっている」
(4)自分の問題と認識しない
- 学校:「これはいじめではなく、からかいだ」「自分も悪いかもしれない」
- 企業:「これはパワハラではなく指導だ」「自分がもっと耐えるべき」
3. 企業のハラスメント窓口の問題点と改善策
(1)窓口の信頼性を高める
- 匿名相談の仕組みを強化(外部機関を利用する、報復を防ぐ制度を明示)
- 相談件数の可視化とフィードバック(「毎年〇件の相談があり、〇%は改善措置がとられた」などの実績公表)
(2)相談することのメリットを明確化
- 相談がキャリアに悪影響を与えない仕組みを確立
- 「ハラスメント防止は組織の健全化につながる」というメッセージを周知
(3)「問題を共有する文化」を作る
- 相談=「弱さ」ではなく「改善のための行動」 という意識改革
- 管理職や経営陣が率先して問題を公表し、対策を講じる姿勢を見せる
4. まとめ
企業のハラスメント相談窓口に相談が少ない理由は、学校における「いじめの報告件数が減少する」現象と共通する心理的・社会的要因 によるものが大きいです。特に、「報復を恐れる」「相談しても解決しないと感じる」「相談が弱さと捉えられる」といった認識は、学校でも企業でも共通しています。
さらに、社会に出るまでの間に経験してきた組織に相談することのリスクについては、社会人になったからといって簡単にリセットされるものではありません。
ハラスメントの問題を予防し、小さなトラブルの段階で解決するためには、相談窓口の信頼性向上、相談しやすい環境の整備、相談がキャリアに悪影響を与えない仕組み作り が不可欠ではないでしょうか。