“書かせる”と”書きたくなる”は違う
多くの現場で、ヒヤリ・ハット報告は「義務」であり「ノルマ」となっています。月末になると安全担当者が「今月のヒヤリ・ハット、まだ出してない人は提出してください」と声をかける光景は珍しくありません。
このように「書かせる」ことを前提としたアプローチは“百害あって一利なし”と言っても過言ではありません。なぜなら、そこから生まれるのは「提出すること」が目的化した、中身のない報告書だけだからです。作業員は、怒られないために、面倒な追及を避けるために、「当たり障りのない、改善の必要がない事例」をひねり出して提出します。これでは、いくら報告書を集めても、現場の安全レベルは一向に向上しません。
では、どうすればよいのでしょうか? 答えはシンプルです。
“書かせる”のをやめ、“書きたくなる”『しくみ』をつくる
ことです。
人が自発的に行動するのは、「そうしたい」という内なる動機があるときです。ヒヤリ・ハット報告において、その動機とは何でしょうか。それは、「この情報を共有すれば、自分や仲間が危険から守られるかもしれない」という貢献実感と、「報告しても自分は不利益を被らない」という心理的安全性です。