はじめに
外国人技能実習制度における監理団体は、外部監査人に対して建前上は「独立性」「専門性」「中立性」などを重視していると説明しています。しかし実際には、まったく別の基準で外部監査人を選んでいるケースが少なくありません。
本音で選ばれる外部監査人の特徴
すべての監理団体ではありませんが、多くの団体が現場で重視しているのは、次の2点です。
- 謝礼が安価であること
- 監査の内容が厳しくないこと
つまり、コストを抑えつつ、指摘の少ない外部監査人を優先する傾向があります。
なぜ安さと寛容さが求められるのか
監理団体は、毎年度の外部監査を必須業務として抱えています。予算が限られている中で、外部監査に多くの経費をかけたくはありません。一般的に高度の専門知識を持った監査人は報酬も高く、経費が多くかかるので避けたいと判断されやすくなります。
また、厳しく指摘する監査人が入ると、団体内での業務見直しや再発防止策の実施が必要になります。これは時間も人手、経費もかかる作業であり、敬遠する心理が強く働くことになります。
求められるのは“黙ってサインしてくれる人”
一部の団体では、業務委託する立場から監査人の発言を極力控えてほしいという要望するケースもあります。表面的には監査を実施した記録を残したいだけで、実質的な改善には関心が薄いからです。この点については、謝礼さえもらえればいいという監査人がいれば、win-winの関係ができあがります。
このような場合、監理団体から歓迎される外部監査人の特徴は以下のとおりです。
- 謝礼が低価格
- 報告書が穏当で内容に踏み込まない
- 指摘が少なく、指導的な発言を控える
信頼できる外部監査人を選ぶ団体を見極める
新しい育成就労制度では、監理支援機関で選任した外部監査人の氏名が公表されます。このことは監理支援機関を選ぶ際に、外部監査人にどのような人物を起用しているかによって、機関が行うほかの業務の信頼性を評価する重要な判断材料となります。
信頼できる専門職に監査を依頼している団体は、制度を適正に運用する姿勢を持っていると判断でるのではないでしょうか。
- 独立性の高い監査人を選任している
- 厳しい指摘を受けても改善に努めている
- 外部の意見を受け入れる体制がある
このような団体を選ぶことで、育成就労外国人に対する不適切な対応や不祥事を未然に防げます。結果として、企業にとってもトラブルを避ける大きなメリットになります。
専門職としての姿勢が問われる
外部監査人は、本来であれば制度の健全な運用を支える役割を担っています。安さや黙認を優先する姿勢が広がると、制度の信頼性そのものが揺らぎます。
制度の根幹を守るためにも、外部監査人を受託する専門家は、専門職としての倫理観と使命感を持つ必要があります。