「現状維持バイアス」と、どう戦うか
「現状維持バイアス」という言葉を知っていますか?
──「今まで大丈夫だった」が、いちばん危ない。
なぜ、事故が起きるのか?
作業手順は守られていた。
設備に異常はなかった。
安全パトロールも実施していた。
それでも、事故が起きる──。
そんなとき、見落とされがちな“敵”がいます。
それが「現状維持バイアス」。
「変える必要なんてない」と思ってしまう心理
現状維持バイアス(Status Quo Bias)とは、
たとえ問題があっても、今の状態を続けたくなる心理のクセのこと。
- 「今まで大丈夫だったから、このままでいい」
- 「わざわざ変えなくても問題ないだろう」
- 「前も見逃したけど、結局何も起きなかったし」
これは人間にとって自然な反応です。
でも、安全管理においては最大の落とし穴になります。
災害は「変化しない」現場で起こる
災害が起きた現場をよく見てみると、
「何年もやり方が変わっていない」
「違和感があっても誰も指摘しない」
「問題があっても“慣れ”で見過ごされている」
──そんな空気に支配されていることが少なくありません。
「今まで大丈夫だった」は、「これからも大丈夫」を保証しません。
むしろ、無事故が長く続いている現場こそ、油断が忍び込みやすいのです。
現状維持バイアスと戦う3つの方法
①「問い直す」習慣をつくる
「なぜこのやり方なのか?」「本当にこれが最善か?」
定期的に、やり方を“前提ごと”見直す時間をつくりましょう。
形式ではなく、納得のためのKY活動を。
②「変えること」が普通になる仕組み
小さな変更、改善を定着させる制度や声かけの習慣を持つこと。
変えることを“特別”にしない。
- 「ヘルメットの置き方、ちょっと変えてみよう」
- 「掲示物、見やすい場所に貼り直そう」
そうした些細な変化が、「変えていい」という空気を育てます。
③「違和感を言える」職場づくり
現状維持バイアスは、違和感を飲み込ませます。
「変だな」と思っても、声に出せない空気が危険を育てます。
- 新人や派遣社員が自由に意見を言えるか?
- 「これ、おかしくないですか?」に耳を傾ける上司がいるか?
“言える化”が、現場の安全を底上げします。
「これまで通り」が、いちばん危ない
変わらない安心は、幻想です。
毎日少しずつ、現場も人も変化しています。
その中で、やり方を変えないままでいれば、必ずズレが生まれます。
現状維持バイアスとの戦いこそ、安全文化づくりの核心です。
OFFICE SAFE WORKでは
この「思考のクセ」とどう向き合うか、
どうすれば現場が変わり始めるかに、重点を置いた支援を考えています。
「事故ゼロ」は、やり方だけでは実現できません。
“考え方”を変えるところから、はじめてみませんか?