「いのちを守る技術」2

アンゼンアンシン

「いのちを守る技術」その2──安全行動の“習慣化”という技術

「やればできる」だけでは命は守れません。
やり続けられる仕組みがあってこそ、安全は“日常”になるのです。


技術その1の“気づき”を、どう定着させるか?

前回ご紹介した「技術その1」では、レヴィンの法則(行動=f(パーソナリティ・環境))をもとに、「自分の行動をコントロールする」ための工夫について触れました。

環境に働きかけることで、自然と安全な行動を“選びやすくする”という内容でした。

でも、ここで終わってはいけません。
なぜなら、安全は一時的な努力だけでは守れないからです。


「できた日」だけでは守れない

たとえば…

  • 「今日は気づいて声をかけられた」
  • 「今週はKY活動を真剣にやった」

…これらは素晴らしいことですが、それだけでは事故は防げません
大事なのは、「できた日」ではなく「続けている日々」なのです。


習慣化とは、「努力を意識しなくなる」状態をつくること

行動の習慣化とは、意識しなくても自然にできるレベルまで行動を落とし込むことです。

たとえば、朝の歯磨き。
「今日はやる気があるから磨こう」と考えますか? おそらく考えないでしょう。

同じように、以下のような行動も、“考えなくてもやる”状態にする必要があります。

  • ヘルメットのあご紐を締める
  • 昇降時に3点支持を確保する
  • 作業前に仲間と声をかけ合う

これが、「安全行動の習慣化」です。

習慣化するための3ステップ・メソッド

安全行動を習慣化するには、次の3つのステップを意識してみてください。

① トリガー(きっかけ)を決める

行動を始めるタイミングを固定することで、条件反射のように動けるようになります。

例:
  • 朝礼後に道具の点検をする
  • 作業に入る直前に指差し呼称
  • 昇降前に足元確認と声出し
  • 高所作業では、安全帯を掛けてから指差し呼称

「このタイミングでは必ずこれをやる」決めるのがポイントです。


② 成功体験を小さく積む

「ちゃんとできた」という実感があれば、行動は続けやすくなります。

具体的な方法:
  • チェックリストに記録をつける
  • 周囲とできたことを共有する
  • “できている人”を見つけて声をかけ合い、称賛する

小さな達成感の積み重ねが、「やるべきこと」から「当たり前のこと」へと変えてくれます。


③ 環境を変える・仲間を巻き込む

人は一人ではなかなか変われません。
習慣化には「環境の力」が不可欠です。

仕組みの例:
  • チーム全体でルールを共有し、「お互いに声をかける」文化をつくる
  • 職長やリーダーが見本となって繰り返す
  • ポスターや掲示で常に意識づけを行う

「やらないと浮いてしまう」くらいの環境は、もっとも強力な習慣形成の土台になります。

習慣化は、“無意識の鎧”になる

疲れたとき、焦ったとき、集中が途切れたとき──
こうした“気の緩み”が事故の引き金になります。

だからこそ、

「意識しなくても体が安全行動を行う」状態をつくる。

これこそが、「いのちを守る技術」 その2 の“完成形”だと考えます。


続けるためには「意味」と「繰り返し」が必要

習慣化を支える土台は、「納得感」と「繰り返し」です。

意味のない行動は続きませんし、
繰り返さない行動は定着しません。


行動の意味を、心で理解していますか?

  • 「これは誰かの命を守る行動だ」
  • 「自分の家族のもとに、今日も無事に帰るためにやる」

こうした納得感や目的意識が、習慣化の原動力になります。


「安全のためにやる」から、「安全にやるのが当たり前」へ

「面倒だ」
「何やるんだっけ?」
と頭で考えているうちは、意地でも繰り返して続ける

そして、考えなくても自然にやっている自分に気づいたとき、
それが「いのちを守る技術」その2 の完成です。